2021.01.25

PayCareerの報酬って確定申告がいるの? 税理士さんに聞いてみました

コラム

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1.確定申告と所得

確定申告とは何ですか?簡単に説明をお願いします。

一年間稼いだお金=収入をもとにして、納めるべき税金を計算することです。

まずは、お金がいくら入ってきたかを算出して、そのお金はどんな種類かを分類します。

例えば、日本は収入(所得)の種類を10個に分類しているのですが、会社員だったら給与所得、ワンルームマンションを所有し、貸しているなら不動産所得などと、それぞれいくら収入があったのかを別々に計算して、最終的に合算するのです。

次に、そこから引くお金。

収入から、事業にかかったお金を経費として差し引きます。差し引いたお金がいわゆる所得というものです。

収入経費所得

そこからさらに差し引くことができるのが、所得控除というもの。

所得控除とは……納税者の個人の事情に応じて、所得から一定の金額を差し引く制度。例えば、1年間に支払った生命保険料や社会保険料などの金額、扶養家族の有無等に応じて、税金が軽減されます。

なんでいろいろ引くの?と考える方もいるかもしれません。

課税所得(=税金が課される金額)は最終的に、所得から所得控除を引いた金額で決まります。

そして、課税所得が多いほど、所得税率も高くなり、納める税金の額(所得税額)が高くなってしまいます。そのため、使える所得控除は使って、課税所得を抑えるのが、懸命と言えるでしょう。

おさらいすると……。
収入……月収や年収、給料と言われるもの。
所得……所得は収入から必要経費を引いたもの。
経費……事業を行うためにかかった費用。
所得控除……個人の事情に応じて、所得から一定の金額を差し引く制度。
所得税……1年間の所得に課される税金。所得が多いほど税率も大きくなり、所得税額が高くなる。

つまり収入から経費や所得控除を引いた所得をもとに、所得税が決まるんですね。でも、経費といっても、会社員は給料から経費を引けないですよね。

会社員の方だって、仕事に行くためのスーツ代やカバン代等、いろいろお金がかかっているのに、これって損じゃないかと思うかもしれません。でも実は、経費を特定するのが難しい会社員のために、収入から、みなし経費として、最低65万円が引かれているんです。これを、給与所得控除と言います。

そんな仕組みになっているんですね。ただ、そもそも会社員の方は、確定申告をしているという意識があまりないかもしれません。

会社員の方は「年末調整」というかたちで会社に確定申告を行ってもらっています。それなら心当たりがありますよね。

また、会社員でも医療費が一定の額を超えた場合の医療費控除や、ふるさと納税などの寄付金控除がある場合、副業で不動産投資を行っていて不動産所得を得た、株で利益が出た、といった場合は、確定申告の期間中に自分で確定申告を行う必要があります。

先ほど、所得の種類には10種類あるとのことでしたが、PayCareerの報酬はどんな所得に分類されるのでしょうか?

所得には10種類あり、

①事業所得……小売業、サービス業、製造業など事業による所得
②利子所得……預貯金の利子等
③配当所得……株式投資の利益等
④不動産所得……家賃収入等
⑤給与所得……会社員の給料、アルバイト代等
⑥山林所得……山林伐採費等
⑦一時所得……懸賞の賞金、生命保険の一時金等
⑧退職所得……退職金
⑨譲渡所得……株式投資等
⑩雑所得

①~⑨までに該当しない所得はすべて雑所得に当たり、PayCareerの報酬も「雑所得」に分類されます。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、会社員の方が講演会を行い、講演料として報酬を得た場合、会社員の人がネットオークションで収入を得た場合なども雑所得に当たります。

PayCareerユーザーはどんなときに確定申告が必要ですか?

所得のなかでも、課税される所得、されない所得は決まっていますが、PayCareerの報酬にあたる雑所得は課税所得になります。ちなみに、国民ひとりあたり現金10万円を配ることになった、今話題の「特別定額給付金」などは非課税所得です。

課税所得を得たら、金額に関わらず、誰もが確定申告をしなければなりません。しかし、本業で会社員として給料を得ていて、年末調整をしている方で、さらに所得が20万円以内であれば、確定申告をしなくていいと特例で認められています。

ただ、本業が個人事業主などで事業所得を得ているのであれば、当然確定申告が必要になります。PayCareerで繋がった企業と業務委託として契約し、その仕事を本業の一環としてやる気持ちがあるのであれば、雑所得でなく、事業所得に含められます。

本業が会社員であれば、所得が20万円以下で確定申告不要ですね。ただ、先ほどのお話だと、報酬-経費=所得ということだと思うのですが、PayCareerユーザーだったら、どんなものが経費になるのでしょうか?

まず、面接に行くときにかかった交通費は全額経費にできます。電車賃、バス代、また雨だったからタクシーに乗ったという場合のタクシー代もまた経費に含まれます。さらに、面接を受ける企業や業界について、リサーチのために購入した書籍や資料も全額経費にできます。

つまり
PayCareerから得た報酬が3万円
タクシー代が5000円
リサーチの書籍代が1000円だったら、
所得は2万4000円
になりますね。

ですから、仮にPayCareerで年に7社と面談されて、各社から報酬3万円を得たとしたら収入は7社×3万円=21万円となるわけですが、
使った経費の合計が2万円だったとしたら、年間の所得は19万円となるので、確定申告は不要ということです。

経費にできるかどうかの目安は、事業のために直接的にかかった費用であるかどうか。

例えば、面接のために新調したスーツ代は経費にできるか? そのスーツを年間10回着て、そのうち1回はPayCareerの面接だったとしたら、スーツ代の10分の1だけ経費にできます。一方で、演歌歌手がステージ上でしか着ないキラキラのラメ付の服を購入したなら、職業上直接的に必要と考えられるので、全額経費として認められるでしょう。

そうなると、面接の身だしなみのために行った散髪代は?という疑問もわいてくるかもしれません。これはプライベートとの比重を考えて、1回の面接のためだけに美容院に行ったとは考えにくいため、経費にはなりません。一方で、ホステスさんが毎日髪を美容院でセットしてお勤めに行く、といった場合は職業上直接必要と考えられ、全額経費として認められます。

では、かかった経費はどうやって証明するんですか?

まず、交通費であれば、乗車区間、交通手段、料金、行く先や目的をメモしておくこと。SUICAやPASMOなどの交通系ICカードの履歴を印字して、該当する部分に番号等をつけておけば尚いいですね。

それ以外はレシートを取っておくこと。レシートや領収書は確定申告の際に税務署に提出する訳ではありませんが、どのくらい経費がかかったのかを記入する際に必要になります。また、5~7年は保存義務があり、税務署から連絡があったら見せなければなりません。申告が終わっても捨てないようにしましょう。

なるほど。では、20万円を超えるほどの所得がなければ、特に対応しなくてもいいんですね。

いいえ。ここで注意が必要なのは、所得が20万円以下でも所得が0円か赤字でない限り、住民税の申告だけは必要になるという点です。

住民税!? 先ほど出てきた所得税とは違う税金ですか?

住民税とは、お住いの都道府県・市区町村から課される税金です。

所得税=国に納める税金。
住民税=都道府県・市区町村に納める税金。

所得が20万円以上で、確定申告を行っている人は、確定申告のデータが市区町村に送付され、そこで住民税の計算~申請手続きをしてもらっているため、改めて住民税の申請を行う必要はありません。

でも、所得が20万円以下ということで、確定申告を行わないなら、別途住民税の申告をしなければならないのです。

では、住民税はどこに申請すればいいんですか?

都道府県・地区町村に納める税金とはいえ、申告書を提出するのはお住いの市区町村。申告書は窓口配布のところもあれば、市区町村のHPでダウンロードできるところ、Web上で申告書を作成できるところなど、状況はさまざま。申請も、窓口か郵送で行います。

申告書の作成って難しいの?と気になるかもしれませんが、準備するものは、マイナンバーカードと印鑑、源泉徴収書、収入や経費が分かるもの。

それらをもとに、自分の個人番号や住所や生年月日などの個人情報、収入や所得控除、経費の種目や合計金額を書きこんで行きます。個人差はあるかと思いますが、順調に行けば30分~1時間以内で終わるでしょう。

https://zeisim.e-civion.net/tax-project/tax/pdf/r02_nakano_yosiki.pdf

そうすれば、6月頃に納税通知が届くので、その通知をもとに税金を納めます。納税方法も、金融機関、コンビニ、口座振替、窓口納付などと選ぶことができます。(自治体により異なります)

また最近では「eLTAX 」という無料のサービスを使って、Web上で地方税の申請を行うことができるようになりました。

地方公共団体ごとのサービス実施状況はこちら

eLTAXを利用するためには、対応ソフトウェアのダウンロード、電子申請を行う際にICカードリーダライタの準備などが必要になります。ICカードリーダライタの準備をハードルと感じる方もいるかもしれませんが、Windowsパソコンであれば、対応するAndroid端末をICカードリーダライタとして使い、公的個人認証サービスを利用することが可能です。

対応機種はこちら

2.確定申告のやり方

確定申告をしようと思ったら、どんな準備が必要でしょうか?

まずはマイナンバーカード。さらに、収支を記載できるよう、収入金額が分かる源泉徴収書、経費をまとめた資料を用意しておきます。

源泉徴収書は万が一無くしても再発行してもらえます。最近ではオンラインで発行している会社もありますね。

確定申告に必要な書類はどうやって手に入れられますか?

確定申告の用紙は税務署でもらうこともできますし、HPからダウンロードもできます。ただし、手書きの場合、提出用と控用の2ページ分記入しなければなりませんし、計算ミスの可能性もあります。

そこでおすすめなのが、確定申告の書類を国税局のHPで作成する方法です。

国税庁 確定申告作成コーナーはこちら

画面の案内に従って、個人番号や住所や生年月日などの個人情報、所得の種類や所得控除、収入や経費の種目などを入力して行くだけで、税額の計算も自動で行ってもらえますし、とても簡単に申告書を作成することができます。

では、作成した申告書はどこに提出するんですか?

管轄の税務署に提出できます。ただ、窓口提出はかなり混雑します。あとは郵送もできますが、いろいろな手間を考えたら、自宅からオンラインで電子申告できるe-Taxがおすすめです。

e-Taxも意外と手間がかかると聞いたことがありますが...。

従来e-taxを利用する際には、マイナンバーカードに加えて電子証明書及びICカードリーダライタの準備が必要でした。しかし近年、マイナンバーカード対応のスマートフォンであれば、スマートフォンからもe-Taxが利用できるように。

マイナンバー対応スマートフォンはこちら

国税庁のHPも年々改善されていて、分かりやすく、操作しやすくなっています。まずは一度、挑戦してみてはいかがでしょうか。

それでも最初は税務署に直接提出して、何となく安心したいんです……。

税務署では相談コーナーを置かないところも増えていて、せっかく並んでも、手取り足取り指導してもらえる訳ではありません。基本は自分で申告画面を操作し、操作方法を指導員に聞くというスタンスで、オンラインで記入するのとあまり変わらないんです。

それでも税務署に提出したいという場合。確定申告の期限は3月中旬ですので、3月に入ると税務署はかなり混雑し、1日がかりで提出までこぎ着けた、なんてこともあります。なるべく早めに準備を進め、3月に入る前に税務署に行くようにしましょう。

確定申告といえば、青色申告か、白色申告か、というトピックスをよく耳にします。これって、どちらを選択すればいいんでしょうか?

まず、青色申告にすることを認められているのは、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかを得ている個人事業主。また、青色申告を開始する場合、事業を開始してから2カ月以内に税務署に申請を出す必要があります。

PayCareerユーザーの報酬を分類すると、「雑所得」となりますので、これには該当しないことになります。

白色申告と青色申告を比べると、

白色申告
○会計処理が簡単……近年、白色申告でも帳簿つけが義務化されました。とはいえ、「単式簿記」といって、売上と経費が分かる家計簿のような帳簿つけでOKです。
△税額控除はなし……税額控除などのメリットはありません。

青色申告
△会計処理が大変……青色申告では、複式簿記による複数の帳簿作成が必要になります。また確定申告時には、青色申告決算書(損益計算書、貸借対照表)などを提出しなければなりません。
○税額控除あり……複式簿記による複数の帳簿作成で65万円の控除が受けられます。(簡易簿記を作成し、損益計算書だけを提出し、10万円控除が受けられるコースもあります)

その他、自動車やパソコンなどの固定資産を買った場合、10万円以上のものでも、30万円未満なら一括で経費が計上できるため、これも節税に繋がります。

また、万が一事業が赤字になってしまった場合、赤字分を翌年分に繰り越し、事業の黒字分から前年の赤字分を差し引くことができる、といったメリットもあります。

なるほど。本業が会社員であれば、PayCareerユーザーは白色申告で、と覚えておけばいいですね。そうそう、会社員といえば、本業以外の収入があったと会社に知られたくないという方が多いかもしれません。会社に知られるのはどんなどきでしょうか?

基本的に、確定申告書を税務署に提出すると、その書類は税務署から自分の住んでいる市区町村に送られます。
そして市区町村は確定申告の内容をもとに、本業も本業以外の所得も含めて住民税を計算し、会社宛に住民税の通知を送付します。

会社はそれをもとに、従業員から住民税を徴収します。給料明細を見ると、住民税が給料から天引きされているのが分かりますよね。これを「特別徴収」といいます。

何はともあれ、会社は住民税の通知を確認しますから、金額が多いかな?くらいのことは分かってしまいます。但し、どこからいくら支払われたかはまでは分かりません。

というと、申告したら必ず知られてしまうってことですか?

ただ、確定申告や住民税の申告書には、住民税の徴収方法を選ぶ欄があり、「給与から天引き」「自分で納付」のどちらかに丸を付けます。ここで、「自分で納付」に丸を付ければ、本業以外の報酬分は自分で直接納税することになり、会社には通知されません。これを「普通徴収」といいます。

確定申告表B

確定申告表B

「自分で納付」を選べば、100%安心じゃないですか!

確かに普通徴収を選べば、会社に通知されるのは特別徴収(会社の給与に係る部分のみ)になります。ただし、報酬の支払元からその方の住んでいる市区町村に通知することも考えられます。この場合、特別徴収に加算して会社に通知されるか、普通徴収として本人に通知してくるかは、各市区町村によって異なるので、注意が必要です。

報酬の支払い元から市区町村に通知が行くのはどのようなケースでしょうか?

支払元が市区町村に報告するのは、「給与支払い報告書」というもので、これは「給与」を支払った場合のみ通知することになっています。

PayCareerでユーザーが受け取る報酬は給与ではなく、「雑所得」となりますので、PayCareerから市区町村に通知することは100%ありませんとのことです。その点は安心ですね。

おさらいすると、住民税の納税方法には2種類あり。
特別徴収……事業主が従業員の給与から天引きする。
普通徴収……納税者が直接税を納める。こちらを選ぶと、会社には給与以外の報酬について、通知されない。

ただ、今後マイナンバー制度がさらに普及し、通帳などのデータ管理がマイナンバーポータブルによって行われるようになれば、お金の流れがもっとガラス張りになる可能性があります。

一方で、社会では副業解禁の流れが一気に進んでいます。今後、会社に知られるかどうかに関しては、あまり気にしなくてもよい時代が来るかもしれません。

会社に知られる心配はないとしても、やっぱり確定申告なんて面倒だなぁという方もいるかもしれません。もしやらなかったらどうなるのでしょうか?

確定申告は本来、所得を得たら誰もがやらなければならないものです。しかし、ただでさえ忙しい会社員が、20万円以下の所得で確定申告を行うのは大変だということで、現状免除されていることはお伝えした通りです。

無申告を続けると、税務署から連絡があり、延滞税や無申告加算税が課されてしまう場合も。

もし所得が20万円を越えたら、確定申告をしよう、20万円以下でも所得を得たら、住民税の申告をしよう、という心構えを持っておきましょう。

今回お話を伺ったのは……

所長・飯島一郎さん
飯島総合会計事務所
所長・飯島一郎さん

税務相談全般ほか、起業相談から経営コンサルティング、経理、人事労務に関する業務もワンストップでサポート。
例えば、
・税務相談では、法人、個人の確定申告、記帳代行や会計ソフト、e-Taxの入力指導などの相談全般を受け付けます。
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令和2年度からの税制改正

○会社員の給与所得控除が65万円→55万円になります。そのかわり誰でも一律に受けられた基礎控除が、年収2400万円以下の人に限り38万円から48万円に上がり、そこから段階的に控除額が下がり、年収2500万円以上の人への基礎控除はなくなりました。

○所得税の確定申告から、青色申告の65万円控除の条件として、電子帳簿の保存かe-Taxで申告を行うという項目が加わりました。電子帳簿の保存もしくはe-Taxでの申告を行わない場合、55万円控除となります。